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『「三四郎」の東京学』
2022/06/23(Thu)
【書名】「三四郎」の東京学
【発行日】平成一三年(二〇〇一)一月三〇日
【発行所】日本放送出版協会(NHK出版)
【体裁】四六判、ペーパーバック、カバー装、帯付き。装幀・湯浅レイ子(エイアール)/カバーイラスト(三四郎と美禰子を模した男女とバックに東大安田講堂と東京ドームのイラスト)・高信太郎/本文組版・ファイナル
【頁数】二三〇頁
【定価】一四〇〇円(税別)
【国際標準図書番号】ISBN4-14-080563-3
【目次・内容】
三四郎のいる風景――序にかえて
東京での第一歩
  文明としての新橋駅    広場の音楽『鉄道唱歌』
  熊本~東京一三〇〇キロの旅   名古屋の宿・青年の羞恥
  富士山の景観
三四郎、銀座を往く
  学生風俗の考察について  東京の交通網
  銀座街の風景       東京、その破壊と建設
江戸切絵図とニ十世紀の神田川畔
  万世橋・秋葉原物語    失われた風景・甲武線アーチ橋
  万世橋幻想        神田将門伝説
  明神下・黒門町・講武所芸者   倭建伝説の妻恋神社
本郷台初秋
  本郷三丁目あたり      弥生坂を往く
  椎の木蔭・三四郎の憂愁   東京大学素描
  高橋和巳『悲の器』と東大全共闘   ベルツと枳殻寺
  真砂町あたりの西洋料理
銀杏並木の色づくころ
  三四郎の新学期    三四郎と迷路の電車
  甲武線大久保駅での衝撃
秋の果てまで
  本郷追分から白山六本辻へ
  西片町十番地への三号・「吾輩」考察   三四郎の東京遊学
  東京人の自然愛    里見美禰子・東京の女性
熊本の空と樹々――エピローグ
  森の都・クスノキの葉の輝き   三四郎は熊本城を語らない
  第五高等学校と三四郎
 あとがき
 参考文献一覧
 取材・撮影協力 資料提供
【解題】
 この一世紀の「東京幻想」をモチーフにそのバックボーンとなる精神風土文化まで掘り下げて書かれた『夏目漱石『三四郎』東京幻想・1908年~2000年』に対して、いわゆる「東京学」に焦点を絞り、より広い一般の読者に向けて書き改められたのが『「三四郎」の東京学』である。
 一年前の平成一二年(二〇〇〇)二月に『日本の桜、歴史の桜』をNHKライブラリーの一冊としてNHK出版から上梓した縁なのであろう、四六版のソフトカバーにハイカラさんの漫画チックなイラストが配されて一般読者が手に取りやすい造本になっているように、内容も元本から一般向けに再編集されている。どう改変され、どこがどう削られたかを細かく検証するとおもしろいだろう。
 削られた分、写真や図版が豊富に収録されている。巻末に「取材・撮影協力 資料提供」の一覧が掲載されているが、こういうところはやはり大手出版社ならではであろう。写真が三〇点、『実測改正最新東京全図』(一九〇七)をもとに作成された地図三点(東京駅、神田川、本郷周辺)。
 冒頭の一枚は「旧新橋駅跡」の〈現在〉の写真なのだが、資材置き場のようになった更地と建設中でまだ骨組みだけの巨大ビルが写っている。ここはすなわち再開発著しい汐留なのだが、それからすでに二〇年以上経った〈二〇二二年現在〉の眼から見ると、また別の感慨を覚える。
 六七ページに載っている〈現在〉の東京駅丸の内駅舎も、創建当時のように復原され、グランドオープンしたのは平成二四年(二〇一二)一〇月のことである。背後に写っているグラントウキョウサウスタワーは建設中で、まだ半分ほどの高さしかなく、同ノースタワーにいたっては影も形もない。今に見る超高層ビルがである。小川先生は最晩年に、この新しくも古い形の東京駅を見られているはずである。
 なお、「あとがき」にもあるように、本書は漱石論でも『三四郎』論でもないが、先生が夏目漱石をモチーフに書いた唯一の長編である。
☆西山蔵書 ◎五十嵐蔵書
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『夏目漱石『三四郎』東京幻想・1908年~2000年』
2022/06/20(Mon)
【書名】夏目漱石『三四郎』東京幻想・1908年~2000年
(※背表紙と本文扉のタイトル)
    夏目漱石『三四郎』――東京幻想・一九〇八年~二〇〇〇年
【発行日】平成一一年(一九九九)四月一日
【発行所】ファイナル
【体裁】A五判、ペーパーバック、カバーなし。
【頁数】二五二頁
【定価】二四〇〇円(税別)
【国際標準図書番号】なし
【目次・内容】
三四郎のニ十世紀――序にかえて
熊本の空と樹々
  森の都・楠の葉の輝き   三四郎は熊本城を語らない
  熊本城とその学芸     熊本洋学と文明開化
熊本洋学とハーンのこと
  抗争する国学派、洋学派  横井小楠から蘇峰・蘆花兄弟へ
  路面電車、熊本洋学校――明治の面影を追って……
  ハーン旧宅の蝉時雨    すみれ程の小さき人に……
  三四郎と第五高等学校   竜南精神と漱石のこと
東京・熊本一三〇〇キロ
  一三〇〇キロの旅     少年立志
  名古屋の宿・青年の羞恥  富士山の景観
東京での第一歩
  文明としての新橋駅    新橋駅頭の三四郎
  広場の音楽・『鉄道唱歌』  新橋駅人物誌
三四郎、銀座を往く
  学生風俗の考察について  東京の交通網
  銀座街の風景   並木の桜   東京・その破壊と建設の街
   ――補説・銀座文化風物詩
      啄木・白秋の銀座   東京文化としての資生堂
江戸切絵図とニ十世紀の神田川畔
  万世橋・秋葉原物語    失われた風景・甲武線アーチ橋
  万世橋幻想        神田将門伝説
  明神下・黒門町・講武所芸者   倭建伝説の妻恋神社
本郷台初秋――ひとむらの芒動いて立つ秋か   漱石
  本郷・見返り坂あたり    弥生坂を往く
  椎の木蔭・三四郎の憂愁   東京大学素描
  高橋和巳『悲の器』と東大全共闘   ベルツと枳殻寺
  真砂町あたりの西洋料理
銀杏並木の色づく頃
  三四郎の新学期    三四郎と迷路の電車
  甲武線大久保駅での衝撃
秋の果てまで
  本郷追分から白山六本辻へ
  西片町十番地への三号・「吾輩」考察   三四郎の東京遊学
  東京人の自然愛    里見美禰子・東京の女性
 あとがき
 参考文献一覧
【解題】
 本書も一般の出版社から出る前のパイロット版で、そのまま版下に利用できるように作られたワープロ稿であり、明治大学文学部ほかでの授業用のテキストとして書籍化され、関係大学内の書店のみで販売された。さきの『刀と日本人』同様に一般書肆から刊行されるまで紆余曲折を経て、NHK出版から『「三四郎」の東京学』として出版されたのは平成一三年(二〇〇一)一月で、一年九か月後である。
 その『「三四郎」の東京学』は、本文の組版(というよりテキスト・データ)こそこのファイナル版が利用されているが、『刀と日本人』同様に構成が大幅に替えられている。
 その最たる部分は、冒頭の二章で、冒頭の「熊本の空と樹々」の「森の都・楠(後者では「クスノキ」)の葉の輝き」と「三四郎は熊本城を語らない」がエピローグにまわり、「熊本洋学とハーンのこと」のなかの「三四郎と第五高等学校」が「第五高等学校と三四郎」として短く残るほかは、すべて割愛されていることだ。その他、見出しは同じでも一部省略されている部分があり、銀座に関して興味深い「補説・銀座文化風物詩」は全面的にカットされている。
 目次を比較してほしい。たしかにこの冒頭部は、一編の始まりとしてはなかなか本題に進まない部分で、『「三四郎」の東京学』というテーマでは三四郎が上京するところから始まるほうがすんなりテーマに入れるのだが、三四郎の精神のバックボーンを形成する、あるいは前提となる〈熊本〉の風土と学問、精神文化に関することが語られているので、本来はぜひとも必要なところなのである。特に私たち昭和三〇年代世代より若い読者には。
 さらにその精神風土の問題が、著者小川和佑の愛読者的読み方をすれば、実際に熊本に飛んで(文字通り空路で飛んだ)現地を歩いての肌感覚による取材旅行の息吹が感じられるのが、実に魅力的なのである。この手法は和佑先生が最も得意とするところで、読んでいても楽しいところなのである。それが一般に出た『「三四郎」の東京学』ではほぼカットされ、事実上私家版の本書でしか読めないのはたいへん勿体ないことである。四五字詰め一七行の組版で三九ページ弱。量的にも相当ある。「補説・銀座文化風物詩」も一二ページある。たまたま当時の学生で本書を教材として購入した者は幸運であるから、いかにも教科書然とした本書であるが大切にすべし。
 したがって、本書『夏目漱石『三四郎』東京幻想・1908年~2000年』は『「三四郎」の東京学』の下書版ではなく、「東京幻想」を主軸にした別の本と考えた方がよい。
☆西山蔵書
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『刀と日本人 もう一つの日本美』(光芒社版)
2020/10/05(Mon)
(※本『著書目録』は基本的には編年体であるが、ここではそれを崩して、前記ファイナル版から二年八か月後に公刊された『刀と日本人』の完成版をここに)

【書名】刀と日本人 もう一つの日本美
【発行日】平成一二年(二〇〇〇)一二月三〇日
【発行所】光芒社
【体裁】四六判、ペーパーバック、カバー装、帯付き。
【頁数】二二二頁
【定価】一六〇〇円(税別)
【国際標準図書番号】ISBN4-89542-177-5
【目次・内容】
 はじめに――刀に関する私的覚え書き
第一章 後鳥羽院、美の殉教者
 清明美への憧れ
   桜美への憧れ    太刀に写す桜
   われこそは新島守よ   菊一文字伝説
 古代人の刀剣観
   『平家物語』と神器の剣   神剣伝承と神話
   古代人の刀剣観   百兵を辟く七支刀
   ワカタケルの名を刻む剣
 天平の花・天平の太刀
   青によし寧楽の京師は   花の歌・大刀の歌
   正倉院御物の大刀
 桜文化の招来
   恋の高麗剣   貴船神社の神剣
   伝説「天国」の太刀   王朝花宴と桜文化
第二章 思想としての日本刀
 思想としての日本刀
   頼山陽の日本刀詩とその流行   攘夷思想としての日本刀
   武士の魂再発見   花と刀――山陽と宣長
 武士の魂の虚実
   武士の魂という言葉   近世武士の刀剣観
   虎徹逸話が創る刀剣観   日本人の刀剣観の二元性
第三章 明治新体詩の蘇る日本刀
 江戸漢詩から明治新体詩へ
   熊本神風連、廃刀令への反乱   聖から俗へ、その転換
   明治新体詩の蘇る日本刀
 近代文化の中の桜と刀
   伝統と近代の中で   日本刀の明治秘話
   現代人と日本刀   切所の心理・武技の虚実
   武道の現実
第四章 最先端技術に輝く日本刀の技術
 武の時代を象徴する日本刀文化の終焉
   三島由紀夫の軍刀   三島由紀夫自決
 ドーバー海峡を結んだ掘削機の切刃
   南蛮鉄の渡来   銅の時代と帝国主義
   カレー・フリタン駅の記念碑
   物の輸出ではなく技術の輸出を
 あとがき
 参考文献
【解題】
 本書の元本であるファイナル版の『刀と日本人』は、大学講義のテキスト用に限られた場所でごく少部数しか販売されなかった書籍だが、一編の評論として完結し、内容的にも完成されたものであった。しかし、一般の書肆から公刊されるまでには紆余曲折を経ていて、難産の末に日の目を見た。その二年八か月の間に、「もう一つの日本美」という副題が追加されただけでなく、構成が大幅に変更され、稿も全面的に改められている。
 ファイナル版の【解題】の繰り返しになるが、この光芒社版からは「――補説(対談)――津本陽・剣を語る」がカットされ、逆に、最終章中の「ドーバー海峡を結んだ掘削機の切刃」の新稿が増補されている。序にあたる冒頭部は両版とも私的覚え書きからはじまるが、光芒社はより一般読者向けに「私的な」部分はさらりと流されている。

 刀剣信仰は日本のこころとなって現在も生き続けている。いま、日本のこころを語りながら、ベネディクトの『菊と刀』、新渡戸稲造の『武士道』を超克する正統な日本のこころを描こうと試みたものが本稿である。
       ――「はじめに――刀に関する私的覚え書き」


 七年前の『桜と日本人』(平成五年六月・新潮選書)と対をなす評論で、《桜と刀》という新しくも正統な日本および日本人論の野心作。
☆西山蔵書 ◎五十嵐蔵書
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『刀と日本人』(ファイナル版)
2020/09/28(Mon)
【書名】刀と日本人
【発行日】平成一〇年(一九九八)四月一〇日
【発行所】ファイナル
【体裁】A五判、ペーパーバック、カバーなし。
【頁数】一九六頁
【定価】二四〇〇円(税別)
【国際標準図書番号】なし
【目次・内容】
きわめて私的な室町刀覚え書き――序にかえて
1 神話と刀剣――古代人の刀剣認識について
   神剣伝承   古代人の刀剣観
   四世紀の七支刀と刻銘剣
2 天平の花・天平の大刀
   青によし寧楽の都   花の歌・大刀の歌――武臣大伴家持
   正倉院御物の剣
3 武から文へ――王朝桜文化の時代に
   『万葉集』巻第十二の高麗剣   貴船神社の神剣
   伝説「天国」の太刀   王朝花宴と桜文化
4 西の桜文化と東の刀剣文化
   陽成帝の狂乱   摂関時代の刀剣発達史
   後鳥羽院の美学   桜文化と神威の回復
5 虚妄の思想としての刀
   様式と現実の錯誤   切所の心理・武技の虚実
   武道の現実   聖から俗へ、その転換
   名刀伝説の発生
6 近世武士の刀剣観
   武士の魂ということば   虎徹逸話に見る江戸期の刀剣観
   抜かぬ、斬らぬ刀   武士の誇り
   日本人の刀剣観の二元性
7 思想としての日本刀
   頼山陽の日本刀詩とその流行   攘夷思想としての日本刀
   武士の魂再発見   花と刀――山陽と宣長
8 江戸漢詩から新体詩へ
   ルール作曲「抜刀隊行進曲」
   伊藤博文と東郷平八郎、その刀剣観   桜と剣と
   三島由紀夫自決   古代の神威玉纏剣
  ――補説(対談)――津本陽・剣を語る
 あとがき
 参考文献
【解題】
 版下用に作成したワープロ稿を、明治大学文学部ほかでの授業用のテキストとして書籍化したもの。『桜と日本人』と対になる書き下ろし長編評論である。
 個人的なことを記すが、大学を卒業して、そして、小川和佑先生・節子さんご夫妻のご媒酌により私たち夫婦が結婚してちょうど満十年になる日に発行された本書を私にお贈りいただき、その私信で、「二人で読んでもらいたいと思う。それで、感想を聴きたい。講義の参考にしたいから。(中略)四回書き直してほぼ完璧と思う。これ以上、推敲するとバランスが崩れそうだが、君たちはどう思う。」と添えられていた。今となってはどんな感想を返したかまったく覚えていないが、「二人で」とか「君たち」というのは、私たち夫婦がともに卒論を三島由紀夫で書いたからであろう。むしろ私より、向山葉子氏の感想が聴きたかったのではないか。その向山氏は、はるか後年(すでに小川先生亡きあと一年半以上たって初演された)いわゆる「二・五次元」と呼ばれるようになっる舞台『刀剣乱舞』に夢中になるぐらいであるから。
 本書はそれから二年八か月さらに温められ、平成一二年一二月に光芒社より「もう一つの日本美」という副題が付いて一般に公刊された。先の私信で「四回書き直してほぼ完璧と思う。これ以上、推敲するとバランスが崩れそう」と述べておられるが、その一般に公刊された完成版は構成も大幅に変更され全面的に稿が改められている。
 光芒社版からは「――補説(対談)――津本陽・剣を語る」がカットされている。逆に、最終章中の「ドーバー海峡を結んだ掘削機の切刃」は、ファイナル版以降に書かれた新稿である。
 小川和佑研究の側からすると、注目すべきは、序にあたる冒頭部は両版とも私的覚え書きからはじまるが、ファイナル版の方が「きわめて私的な」と断り書きがある通り、より私的な内容が含まれている。
☆西山蔵書
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『桜誌 その文化と時代』(原書房版)
2020/09/25(Fri)
【書名】桜誌 その文化と時代
【発行日】平成一〇年(一九九八)三月三〇日
【発行所】原書房
【体裁】四六判、丸背厚表紙、カバー装、帯付き。装幀/坂田優。
 本文中五箇所とカバーのさくらの図版は、「さくらづくし」(国立国会図書館蔵)より。カバーは同図版に彩色。一一八頁の図版は狩野長信筆「花下遊楽図屏風」(文化財保護委員会蔵)の部分。その他五箇所のイラストはサンクリエイト。
【頁数】二六八頁(「索引」含めると二七六頁)
【定価】一六〇〇円(税別)
【国際標準図書番号】ISBN4-562-03058-5
【目次・内容】
  さくらの想いを……序にかえて
   日本の春  水上勉のさくら愛
   桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる!  さまざまのさくら
1 古代に咲く
   古代のさくら  秋に咲くさくら――『日本書紀』のさくら
   さくらの歌物語  「桜華」をめぐって  万葉のさくら
   桜児説話  桜美・桜愛――桜こそ女性  平城京のさくら
2 王朝絵巻のさくら
   さくらの歌――平安京の春  憧れと郷愁の花
   散りゆくさくら  さくらの物語――伊勢・源氏など
   『古事談』と南殿のさくら  花の宴とさくら文化
3 薄明に咲く
   移りゆく時代に  武門のさくら  さくらと吉野信仰
   薄明に咲く――桜町中納言と泰山府君――『平家物語』のさくら    
4 さくら美の完成者
   唯美者たちのさくら観  西行桜――シダレザクラの可憐さ
   さくらの唯美者  東国のさくら――実朝
   定家・そのさくら観  絵巻のさくら
5 さくらのドラマツルギー
   室町さくら文化前史  常照皇寺の御車返し――里桜花開く
   『花筐』・蘇る王朝のさくら  継体伝説と淡墨桜
   巨桜の物語――『真清探当証』
6 聖から俗へ
   広がるさくら美の波紋  『閑吟集』の風流
   醍醐の花宴――さくら観の転換
7 新しいさくら文化の開花
   生活文化のさくら  『江戸名所花暦』  さくら図鑑の流行
   東都の自負とさくら  江戸のさくら流行――芭蕉のさくら
   蕪村・一茶――天明のさくら
   攘夷と「国華」――思想化するさくら
8 文明開化とさくら
   さくらが変わる――ソメイヨシノの出現  文明開化とさくら
   明治の花見――ベルツの日記から
   ハーンの『怪談』――不思議なさくらに因む物語
   散る花といのち――さくら観を変えた思想
   祇園のさくら――吉井勇『祇園冊子』
   新体詩人たちのさくら観  
9 さくらの歌びとたち
   さくらの歌びとたち  白秋・空穂・迢空
   朔太郎・犀星のさくら
10 桜誌の文学・昭和時代Ⅰ
   死と再生の花――梶井基次郎
   春日風景のさくら――三好達治・谷崎純一郎
   墓口安吾――土俗に潜む花妖
   石川淳の桜鬼――『修羅』中世の物語  現代詩のさくら
11 現代文学に咲く・昭和時代Ⅱ
   士道のさくら――五味康祐のさくら
   さくらの復権――水上勉『桜守』  宇野千代の『薄墨の桜』
   惑いの花――渡辺淳一の『桜の樹の下で』
   終章・中村真一郎の花譜――『雲のゆき来』『美神との戯れ』

 名所・名桜10選(花の名所10選  名桜10選)
 日本各地のさくらの種類(日本には三〇〇種以上)
 日本のさくら一覧
 さくらの文献目録・解題
  Ⅰ 小説・詩歌等(A小説  B詩歌集)
  Ⅱ 桜の論文集・エッセイ集
    (A人文科学に関するもの  B自然科学に関するもの)
  Ⅲ 雑誌特集号
    (A文学に関するもの  B園芸、趣味の関するもの)
 あとがき
 索引
【解題】
 一年前に教科書用にファイナルで製作・販売された『桜誌 その文化その時代』を基本的な版下として、ファイナル版にはない図版やイラストが合計一一点挿入され、「あとがき」と「索引」が追加されて原書房より公刊された。内容的にはファイナル版も完全なものであるが、いわばテスト版であるため、本書の完成された初版はこちらの原書房版というべきであろう。
 これは小川和佑先生の最初の桜に関する著書である朝日文庫版の『桜の文学史』絶版を受けて、再版の話があったが、

 …… しかし、旧著であるし、それに刊行後に、あれもこれも書きたかったことを割愛していた。また、それから六年、所々のさくらを観、思うことも多かった。――それで、再版ということではなしに、全稿を改稿訂正して、「桜史」の決定稿にと意図した。従って書名も改めて『桜誌』とした。    ――「あとがき」


 とあるように、朝日文庫版『桜の文学史』(平成三・一九九一年三月刊)の改稿・改定版である。のちの文春新書版『桜の文学史』(平成一六・二〇〇四年二月刊)はさらに新書向けに改稿され、「第十三章 忘れ得ぬ桜=現代」が増補されている。
☆西山蔵書 ◎五十嵐蔵書
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『桜誌 その文化その時代』(ファイナル版)
2020/09/24(Thu)
【書名】桜誌 その文化その時代
【発行日】平成九年(一九九七)四月一〇日
【発行所】ファイナル
【体裁】A五判、ペーパーバック、カバーなし。
【頁数】二八〇頁
【定価】二二〇〇円(税別)
【国際標準図書番号】なし
【目次・内容】
※原書房版『桜誌 その文化と時代】を参照。異なる点は章分けの数字で、「1 さくらの想いを――序にかえて」が原書房版では「1」が付かず、文字通り序章となり、以下繰り下がる。また、副題が微妙に異なるほか、原書房版には「あとがき」と「索引」が追加されている。
【解題】
 一般の出版社から刊行される前に、教科書用に製作された書籍で、明治大学ほか一部の大学の書籍部のみで販売された。いわばパイロット版であるが、ほとんど改変されることなく、このファイナル版の本文をほぼそのまま版下にして一年後に原書房から公刊されている。つまり、この時点で内容的には完全に仕上がっていたものである。
☆西山蔵書 ◎五十嵐蔵書
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『近代日本の宗教と文学者』
2020/09/22(Tue)
【書名】近代日本の宗教と文学者
【発行日】平成八年(一九九六)二月一日
【発行所】経林書房
【体裁】四六判、丸背厚表紙、蓮の花がデザインされたカバー装、帯付き。
【頁数】一五九頁
【定価】一八〇〇円(本体・一七四八+消費税3%)
【国際標準図書番号】ISBN4-7673-0531-4
【目次・内容】
近代の神々とその漂流――まえがきにかえて
  神仏分離令の波動  開化期の渡来神
新しき神の歌声
  一八七三年(明治六)・降誕祭  讃美歌の翻訳者たち
  キリスト教と日本人
宗教歌から浪曼詩へ
  文明としての讃美歌  『初期讃美歌集』から『於母影』へ
  思想としてのキリスト教  少年島崎春樹とキリスト教教育
  明治女子教育とキリスト教  『文学界』『若菜集』の藤村
  初期讃美歌から抒情詩へ
漂流する近代の神仏たち
  与謝野鉄幹と石川啄木が見たもの  革命と宗教
  反近代の幻想者ラフカディオ・ハーン  虚無ということ
  漱石の彷徨
信仰と革命の思想
  苦悩の芥川龍之介  神を求めて
  明治キリスト教の行方  思想と宗教のはざまで
  エマオの旅ぶと
美しいに日本に詩と真実を求めて
  大和の三輪山  大和は国のまほろば  大和古寺の荒廃
  和辻哲郎の『古寺巡礼』  飛鳥仏の感動
  苛烈な時代の信仰  信仰の無償性と亀井勝一郎
  堀辰雄の場合  堀辰雄の大和の発見  人麻呂挽歌
  『大和路信濃路』  『大和古寺風物誌』
  亀井勝一郎の大和  蘇る信仰
  芥川の『西方の人』から三月堂・月光菩薩へ
 あとがき
【解題】
 本書の成り立ちは「あとがき」の冒頭をそのまま転載した方がよいであろう。

 この『近代日本の宗教と文学者』は、平成七年(一九九五年)一月十二日(木)から、二月二十三日(木)まで、毎木曜、南青山のNHK文化センターにおいて四回の連続講義を録音し、次の二月五日(日)から二十六日(日)までの四回、NHKラジオ第二放送の二十時から二十一時に放送された「セミナー『近代日本の宗教と文学者』」を加筆推敲したものである。
 放送終了後、聴視者からの要望もあって、改めて講義ノートをこのような形にした。
 いま、神とはなにか。宗教とはなにかという問いが今世紀で最も強く求められている。そうした声を宗教家の立場からではなく、明治以来の近代文学に求めることによって、一つの普遍的な形での日本人の宗教心を明かにしようとすることが、講義と放送の主眼であった。


 この評論は、先生が三十代のころ従事していた初期讃美歌集や小学唱歌の注釈という地道な仕事が基礎になっている。直近では桜の文学や東京の都市学を論じていて、突如として宗教の話になったように見受けられるかもしれないが、三十数年来あたためていた論である。
 特筆すべきは、元の原稿が放送用のいわば台本である点で、先生自らマイクの前で講義した実際の放送(録音)には若干のアドリブも含まれているようだが、ほぼ完全な原稿が用意されていたと思われる。それに「加筆推敲」したものが本書であり、元々が一般の聴視者に向けて語られたものであるので、たいへん平易な、しかし幅の広い奥の深い評論になっている。
 NHKラジオ第二放送での放送日程は「あとがき」の通りであるが、二回目の収録の二日前に阪神淡路大震災が起こり、放送はその衝撃のさ中から、放送時には誰も予想だにできなかったことではあるが、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起こる少し前という、神や仏、宗教の問題がまさに問い直されるべきタイムリーといえばタイムリー過ぎるほどの期間に放送された。
 なお、この毎回一時間(当然CMなし。休憩なし。最初と最後にアナウンサーのごく簡単な番組紹介がるのみで、正味五八分)全四回の「NHK文化セミナー」の放送は、西山がカセットテープに録音している。令和二年九月、先生の七回忌前後にアナログのデータをデジタル化して保存。
☆西山蔵書 ◎五十嵐蔵書
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『東京学』(経営書院版)
2020/09/20(Sun)
【書名】東京学
【発行日】平成八年(一九九六)一月九日
【発行所】経営書院
【体裁】四六判、ハードカバー装、帯付き。やくみつる氏の四コマ漫画が表紙カバーに、扉にもイラストが。ブックデザイン/秋山法子。
【頁数】二三八頁
【定価】一三〇〇円(本体・一二六二円+消費税3%)
【国際標準図書番号】ISBN4-87913-565-8
【目次・内容】
[プロローグ]東京は「とうけい」であった!
 東京学は江戸学ではない  故意か無知か「とうきょう」となった
 東京のものはみんな利口で人が悪い  東京人は冷たいか
 そもそも「江戸っ子」、この大きな誤解
[第1章]東京人気質入門――組織・流行・画一化
 大阪人は個人プレー、東京人は組織プレー
 東京人の守護霊は肩書きとポスト  東西二つの流行の潮流
 ほんとうはシャイで気弱な東京人
[第2章]東京人の人間関係――東京人は冷たいか
 対立する東京VS地方  包容力の街・東京
 はじめ冷たい、あと温か  なんとも嫌みな東京人
 東京人との交際タブー集  住むなら墨田区向島
[第3章]スジを通すぞ東京人――ホンネとタテマエ
 東京人のバックボーン――「痩せ我慢」
 スジを通すぞ東京人  一線を画すホンネとタテマエ
 商人のあいそvs士族の意地
 理想と現実の間で――三島由紀夫自決
 『もう、きみのは頼まない』――城山三郎の描く硬骨の企業人
[第4章]食の坩堝――東京の味あれこれ
 東京の甘味、みつ豆とみぞれ
 東京文化の象徴、資生堂のアイスクリーム
 下町人の名品小倉アイスと東京會館のシャーベット
 木村屋の餡ぱんも東京の味
 流行する東京の味覚――ティラミスからもんじゃへ
[第5章]東京の女性たちはいま――OL、ギャル、コギャル
 女子大生と女子学生――まず、その定義から
 女子大生ファション論  昔から東京の女性は美しい
 没個性? 画一的に見える……?
[第6章]東京ことば――「山の手ことば」と「下町ことば」
 地方主義と共通語  共通語が悪いんじゃあない
 誰でも話せる東京ことば  東京ことばを考える
 共通語の中の職域ことばさまざま――業界ことばから自衛隊ことばまで
[第7章]東京の街と風俗
 東京の街は毎日が劇場だ  猫町・東京駅
 東京は名所だらけ  名所の老舗、銀座・上野公園・浅草
 移り変わる東京の名所  ベイエリアこそ東京の新名所だ
 大沢在昌の『新宿鮫』と眠らない街を歩けば
[第8章]どうなる、どうする、これからの東京
 東京はどこへ行くか  学校から始まる
 東京を支える企業と企業マン  東京の企業マン四重奏
 超情報。超ハイテクの果て
[エピローグ]「東京学」っていったい…何?
 終末論の流行  「東京学」はあるか  東京は美しいか
参考文献
【解題】
 これまた異色の一冊である。書き下ろしによる、いわば都市考現学の長編評論であるが、社会学的というよりはやはり人文学的考察である。もちろんこれは、帝塚山学院大学の教授(当時、のち学長)大谷晃一氏が著わしロングセラーとなった『大阪学』(正/続・ともに一九九四年・経営書院刊→のち新潮文庫)に対しての書で、のちには岩中祥史氏の『名古屋学』など、個別都市学がちょっとした流行になった。
 帯にも印字された[エピローグ]のことばを引用する。

「東京学」は都庁編の「東京史」ではない。本格的な「東京学」が成立するのは次の世代においてであろう。その場合、プロローグでも強調したように「江戸学」と「東京学」は分離させねばならない。
 東京。この多層構造の多面体を論ずることは多重人格の分析よりも至難である。
 ではなぜおまえは著名にあえて「東京学」の名を冠したかと問われるであろう。
 大谷さんの『大阪学』正続二巻は九〇年代の大阪考現学であるならば、東京にもそれがあってもよいのではないか。そのうえ、今後に次代に形成されるであろう東京学への一つの契機になればとも考えた。


 本書は四年後の平成一二年(二〇〇〇)四月に新潮文庫に入るが、その際その後の事象が書き加えられ、第9章として「首都圏という名の東京」が追加される。
 二一世紀も二〇年が過ぎ、「令和」の御代に入った現在からすれば、あくまでも一九九五年に書かれたということを考慮する必要がある。それは大谷晃一氏の『大阪学』にしても同様であろう。
 何しろ、阪神淡路大震災とオウム真理教の事件が起きた直後で、携帯電話もまだ一般には普及しておらず、インターネットも黎明期で、やっとウインドウズ95が登場したばかり、リーマン・ショックも先の話で、東日本大震災はまだ起こっておらず、ましてや新型コロナウイルスの世界的大流行など予想だにしていな頃、という但し書きが必要であろう。四半世紀前の論考なのである。しかし、本質を突いている多くの部分は古くはなっていない。
   (令和二年九月一九日・小川和佑先生七回忌のご命日前日に)
☆西山蔵書 ◎五十嵐蔵書
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『実践 日本語表現』
2020/09/18(Fri)
【書名】実践 日本語表現
【発行日】平成七年(一九九五)四月二五日
【発行所】経林書房
【体裁】四六判、ソフトバック、カバ―装。
【頁数】(未確認)
【定価】(未確認)
【国際標準図書番号】(未確認)
【目次・内容】
『「書く。」実践文章入門』に同じ。
【解題】
 同じ経林書房から刊行された『「書く。」実践文章入門』(昭和六〇・一九八五年六月二五日発行)の改題・新装版。
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『桜讃歌―日本人のこころ』
2020/09/16(Wed)
【書名】桜讃歌―日本人のこころ
【発行日】平成六年(一九九四)三月一〇日
【発行所】ビジネス社
【体裁】四六判、丸背厚表紙、カバー装、帯付き。写真撮影・後藤恭三。口絵アート紙一~四頁と一〇一~一〇四頁の合計八頁に桜のカラー写真二三点。本文頁にも桜のモノクロ写真が三三枚鏤められている。
【頁数】二一四頁
【定価】一六〇〇円
【国際標準図書番号】ISBN4-8284-0555-0
【目次・内容】
桜讃歌 日本人のこころ
 桜讃歌 日本人のこころ
  里桜と山桜  日本の桜のルーツ  日本人の桜愛
  桜美の王朝文学  さまざまな桜
 日本の桜一覧
 桜の小史
  王朝文化の桜  乙女の桜から武人の桜へ
 惜春賦に咲く桜
  惜春賦としての遅桜  外来種の白い桜  五月の白い桜空間
 ミュンヘンの桜・大和路の桜
  ミュンヘンの桜   大和路の桜
 満開の桜の森へ
  東京の初花   新宿御苑の観桜会   満開の桜の森へ
 面影の桜
  花のあわれ  戦慄する桜  桜の精  王朝和歌の桜
 秩父路の桜・祇園の桜
  秩父路の桜  祇園白川と吉井勇歌碑
 花下遊楽
  花見嫌い  聖から俗へ
桜の詩学
 近代詩の桜譜
  明治詩の桜  新しい桜観  大正詩の病める桜
 散華の思想と桜
  桜の樹の下には  モダニストたちは桜を歌わない
  夭折者たちの桜  死と美の桜観
 桜の呪縛
  桜よ、再び蘇れ  呪縛からの解放
 現代詩の桜
  葉桜の陰に  いのちの讃歌  自然との共生  面影と重なる桜
 花の名所10選
 名桜10選 
 あとがき
【解題】
 九一年の『桜の文学史』(朝日文庫)、九三年の『桜と日本人』(新潮選書)に続く三冊目の桜の文学論。「既刊の二冊の発展の上に書かれたわが愛桜記である」(「あとがき」)

 ここに収めた諸論は、その内容から二章に頒った。その第一章に当たる「桜讃歌」は、桜に心を寄せて以来、さまざまな機会に新聞、雑誌などに執筆した小論を集成した。第二章の「桜の詩学」は詩誌『現代詩手帖』九三年版四月号、特集「桜の詩学」に発表した「近代詩空間の桜譜」に拠り、新たに書き下ろした桜の近代詩小史というべきものである。    ――「あとがき」


 前二書にはない本書の大きな特徴は桜の写真が多数収録されていることであるが、同じく「あとがき」によると、
「それに既刊の二冊を読んでくれた読書の要望が多かったさまざまな桜の花姿の写真も、新しく知己を得た桜の写真家であり、ネッスル日本・飲料サービス本部長の後藤恭三氏の作品で飾ることを得た」ということである。ことばで花の形を説明されてもなかなかイメージがつかめない一般読者には嬉しい編集で、特にカラーページは美しく、色の違いもよく分かって、眺めているだけで心が癒される。
☆西山蔵書 ◎五十嵐蔵書
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