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『伊東静雄論考』
2017/07/13(Thu)
【書名】伊東静雄論考
【発行日】昭和五八(一九八三)年三月二五日
【発行所】叢文社
【体裁】A5判上製、丸背厚表紙、嚥脂クロース装、貼函入り、帯付。口絵アート紙二頁(昭和10年頃の詩人の肖像/セノオ楽譜281番、竹下夢二装画、リヒャルト・シュトラウス『モルゲン』の表紙と譜面)。造本・梯耕治。
【頁数】「あとがき」まで三五五頁。初出一覧一頁。引用詩索引一頁。
【定価】三七〇〇円
【目次・内容・初出】
伊東静雄論
 序章 新しき古典として――静雄頌
 1 詩人の生い立ち
 2 青春、あるいは詩人の出発
 3 創造者への自覚
 4 わがひとに与ふる哀歌
 5 日本浪曼派と伊東静雄
 6 八月の石にすがりて
 7 わが家はいよいよ小さく
 8 雲雀の歌
     〈初出:一九八〇年七月(四月と誤記) 『伊東静雄 孤高の抒情詩人』講談社現代新書〉
伊東静雄論 補記
 1 「わがひとに与ふる哀歌」の新貸料
      ――夢二装画「モルゲン楽譜」をめぐる――
     〈初出:一九八二年七月 「昭和文学研究」第五号〉
 2 伊東静雄と三島由紀夫――その邂逅と訣別
     〈初出:一九七二年十月 「現代詩手帖」十月号 思潮社〉
     (原題「詩の訣れ――三島由紀夫少年詩篇」)
 3 雲雀の記憶
     〈初出:一九七三年十一月 『伊東静雄論』五月書房〉
伊東静雄書誌研究
 1 伊東静雄論の形成
    詩人研究の現在  詩人研究の指針  全集・資料等について
    詩人研究の問題点  詩人論・作品論  作品研究の課題と展望
    主知主義文学と静雄詩の問題  「哀歌」の周辺
    『詩集夏花』以後の詩集について
     〈初出:一九七三年十一月 『伊東静雄論』五月書房〉
     (右所収稿を基に書き下ろし)
 2 伊東静雄書誌一覧・解題
     〈初出:一九七三年十一月 『伊東静雄論』五月書房〉
     (右所収稿に増補訂正を加えた新稿)
 3 研究文献目録・総覧
     〈初出:一九七九年八月 『現代詩読本⑩伊東静雄』思潮社〉
     (右所収稿に増補訂正を加えた新稿)
 4 伊東静雄年表――付同時代史
     〈初出:一九七三年十一月 『伊東静雄論』五月書房〉
     (右所収稿に増補訂正を加えた新稿)
 5 「コギト」「日本浪曼派」年表
     〈初出:一九七七年三月 『立原道造研究』文京書房〉
あとがき
初出一覧
(引用詩の)索引
小川和佑著『伊東静雄論考』函
【解題】
 先生の伊東静雄論、書誌研究の集大成決定版。講談社現代新書版『伊東静雄 孤高の抒情詩人』を第一部に、その後発見された新貸料による「わがひとに与ふる哀歌」論を加え、五月書房版「伊東静雄論」から重要と思われる二篇の論考を再録し、同書所載の研究貸料を基に新たに書き下ろされた増補改訂版書誌研究を併せた大作である。
【「あとがき」より】
 一九八〇年の夏。長い課題だった書き下ろし詩人論『伊東静雄』を講談社現代新書の一冊として刊行することができた。思えば筆者の人生の三分の二以上の時間はこの浪曼詩人の詩的衝撃に憑かれていたといってよい。あの一九四五年の初夏。一冊のアンソロジーで「水中花」と「八月の石にすがりて」を読んだ。その詩的感動はそれまでに読んだどんな詩篇よりも異様にと呼んでよいくらい苛烈であった。その衝撃は極めて危険に満ちた美しさだった。あの退廃し崩壊寸前だった時代にあって、これらの詩は自己の強制される不条理な死さえも、享受することができるといった内的衝迫さえ伴ったのであった。
(中略)
 伊東静雄への長い道程は筆者にあっては負の起点から第一歩を踏み出したといってよい。その着手は先ず、同時代からのこの詩人を語る膨大な、そして散逸しかかった研究文献の渉猟から始った。つまり、静雄詩が如何に読まれたかを通じて、十代の半ば苛烈な一撃を与えたこの詩人の実像を知ろうとしたからである。その詩的享受としての静雄詩の読まれ方はそのまま、昭和という時代の知識人たちの精神的軌跡を形成していた。(後略)
     ――一九八三年 早春
☆西山蔵書 ◎五十嵐蔵書
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『立原道造 忘れがたみ』(旺文社文庫版)
2017/06/22(Thu)
【書名】立原道造 忘れがたみ
【シリーズ名】旺文社文庫 200―1
【発行日】昭和五八(一九八三)年三月二五日
【発行所】旺文社
【体裁】文庫版、カバー装。カラー口絵(アート紙)四頁。カバーと口絵のカラー写真・佐藤英世。立原道造のカット・写真・図版・文学散歩地図など多数収録。
【頁数】二六七四頁
【定価】三六〇円
【目次・内容】
 PROLOGUE―美しい明日は……
 浅き春に寄せて
Ⅰ 風立ちぬ――昭和十三年五月―九月・信濃追分
  萱草の昼に
  愛する
  草に寝て
  ひとり林に……
  また昼に
  夕映えの中に
  夜を詠める歌
  野花に捧ぐ
 間奏曲――オルフェのソネット・昭和十三年九月
  オルフェのソネット
Ⅱ 林檎実る頃――昭和十三年九月―十月・盛岡
  北へ……
  林檎実る頃
  雨の言葉
  ランプよおまえのために
 間奏曲――風信子・昭和十三年十月―十一月
  夕映えばかりをのこして……
  旅人の夜の歌
Ⅲ 昨日よりも美しく……昭和十三年十一月―十二月・長崎
  わがまどろみは覚めがちに
  歌ひとつ
  何処へ?
  昨日よりも美しく……
  天の誘い
  旅のおわり
  傷ついて、小さい獣のように
 EPILOGUE―忘れがたみ
  忘れがたみ
  風に寄せて
 年譜
 解説――文庫版の読者のために(昭和五十八年二月)
【解題】
 基本的には初版単行本(文京書房・昭和五〇年三月刊)を文庫化したものであるが、「新たに数かずの資料や写真を入れて、文庫本の新しいタイプを試みた。それはそのまま、『立原道造文学ツアー』の手引きともなり得るだろう」(「解説」)という仕上がりになっている。初版の単行本も捨て難いが、確かにこれは文庫版というスタイルの方が似合っているかもしれない。
 個人的なことを書くことを許していただくなら、この本は私が明大に入学した年(それもちょうど合格を確認し、希望を抱いて入学の手続きをしている頃)に刊行されたもので、実際に手に入れて熱に浮かされるようにして読むのはその二年後だが、四年次の「詩歌研究」のテキストに使われたこともあり、たいへん思い出深い一冊である。
 四年生の春(昭和六一年四月の終わり)、小川ゼミ初の軽井沢合宿の予約を取るために、この本と『堀辰雄 その愛と死』を携えて、信濃追分の油屋旅館に直談判に行ったのだった。奥付の余白に「昭和60年2月16日 三省堂にて購入」と書いてある。二冊とも、その二年後の昭和六二年に廃刊になった旺文社文庫。社会思想社の現代教養文庫とともにほかの大手出版社の文庫にない、ちょっと毛色の変わった良書が揃っていたので残念でした。当時は新刊書の棚から買ったのでした。この二冊はぜひとも復刊してもらいたいものです。
☆西山蔵書 ◎五十嵐蔵書
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『ジュニア版 目でみる日本の詩歌⑪ 現代の詩[一]』
2017/04/29(Sat)
【書名】現代の詩[一]
【シリーズ名】ジュニア版 目でみる日本の詩歌⑪(全一五巻)
【発行日】昭和五七(一九八二)年四月一日
【発行所】TBSブリタニカ
【体裁】B5変形(190ミリ×245ミリ)極厚表紙、カバー装。本文(一~一二〇頁)アート紙。装幀・太田徹也。
【頁数】一五〇頁
【定価】二二〇〇円
【監修】井上靖・山本健吉
【目次・内容】
はじめに
この巻の構成と使い方
(以下、カラーページ掲載作品。作者の並びは生年順)
田中 冬二……「青い夜道」/「鷽鳥」
吉田 一穂……「Delphinus」
蔵原伸二郎……「遠い友よ」
丸山  薫……「神」/「虎になれ」/「白い鳥」
尾形亀之助……「夜がさみしい」
北川 冬彦……「楽器」/「雑草」
三好 達治……「村」/「チューリップ」「土」/「大阿蘇」
堀  辰雄……「天使達が」
竹中  郁……「旅への誘ひ」
坂本  遼……「春」
神保光太郎……「秋の童画」
藤原  定……「ナワ飛びする少女」
阪本 越郎……「花ふぶき」
伊東 静雄……「夏の終り」/「夜の停留所で」
津村 信夫……「ある雲に寄せて」
菱山 修三……「来訪」
大木  実……「初夏」/「子供と暮しながら」
木下 夕爾……「小さなみなとの町」
立原 道造……「村はづれの歌」/「草に寝て……」
(一二一頁以下、やや厚い普通紙)
現代詩の流れ――昭和二〇年まで(本文二段組、二一頁)
現代の詩[一] 関係年表(五頁)
さくいん〈人名・事項〉〈掲載詩〉(三頁)
【解題】
 見開きのカラーページに一篇の詩とその詩をイメージした写真をレイアウト。次ページの見開き本文が詩の鑑賞になっていて、下段に、①作者(の略歴) ②語句(の注解) ③参考(作品の鑑賞あるいは作者理解を深める手引きとなる参考作品)がマウントされている。
『目で見る日本の詩歌』の名の通りビジュアルに訴える文芸鑑賞書で、古典から現代まで全一五巻のうちの一冊。『ジュニア版』と銘打たれているように、小・中学校の国語教科書に収録されている詩人の作品を中心に採られている。本文解説の文章も「です・ます調」で、おもに中学生くらいの生徒を対象に平易に書かれているが、その内容は非常に濃く、一種の事典として、日本全国津々浦々の図書館に配架されたようだ。
 ジュニア向けどころか、大学のテキストにもなった。私(西山)が明治大学に入学したのは、この本が出た翌昭和五八年であるが、一、二年生が受ける一般教養過程の「文学」の授業のテキストに使われた。その前後に入学した学生には非常に懐かしい本だと思う。
 前期と後期に提出させられたリポートは、この本の体裁に倣って、自分の好きな詩を一篇採り上げ、その「鑑賞文」を書き、作者紹介と語句の注解を付け、「参考詩」も上げるというものであった。今にして思えば、一般教養の授業としては相当にレベルの高いものであった。
 個人的には、その四年後の卒業時に、小川和佑先生からの斡旋で『日本文芸鑑賞事典』(ぎょうせい刊)の原稿を書く時にたいへん役に立った。というより、入学間もなく必死になって書いたリポートが、その下勉強になっていたのだろう。特に、一般向けに「です・ます調」で平易に書くという技術の習得には、大いに参考になった。
 それにしても、つくづく思う。詩はいつまでも古びない。小川和佑先生の解説も普遍の真理を突いている。オジサン、オバサンになっても、繙けばすぐさま、若き日の新鮮な気持ちに立ち返らせてくれることだろう。
☆西山蔵書
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『各駅停車 栃木県 全国歴史散歩⑩』
2016/09/17(Sat)
【書名】各駅停車 栃木県 全国歴史散歩⑩
【発行日】昭和五六(一九八一)年六月三〇日
【発行所】河田書房新社
【体裁】四六判、ソフトカバー、透明ビニールカバー付。
【頁数】二五四頁+索引四頁、栃木県内国鉄各駅所在地一覧。
【定価】九八〇円
【目次・内容】
栃木県――人間・歴史・風土
宇都宮駅
東北本線(宇都宮以南)(宇都宮以北)
日光線
両毛線・足尾線
真岡線
鳥山線
東武鉄道(東武日光線)(東武宇都宮線)(東武鬼怒川線)(東武佐野線)(東武伊勢崎線)
バス路線(那須温泉郷)(日塩もみじライン)(奥鬼怒川渓谷)(奥日光)
(那珂川流域に治って)
〈付録〉栃木県出身者者名人/栃木県内の国指定・県指定文化財/栃木県内の教育・文化施設/栃木県庁・市町村役所・役場一覧/参考文献
栃木県内国鉄各駅所在地一覧
索引
小川和佑著『各駅停車 栃木県』カバー
【囲みコラム・エッセイ】
宇都宮の近代事始め      もう一つのシルクロード
地図にない路線を走る急行   酒と花と人と
下野の「おくの細道」     日光線エピソード
日光羊羹           含満ヵ渕の化け地蔵
東照宮案内          修験道の霊場
山本有三『路傍の石』     栃木市あれこれ
勇将天徳寺了伯を語る     足利の伝説二題
文学のなかの尊氏像      烏山の山あげ祭
烏山の梁魚          昭和凶作の小作争議
那須氏の興亡         日光山の稚児物語
東武蒸気機関車物語      土方歳三奮戦す
「将門記」幻想        うずまのなまず
盗人こはきとどろくの里    回想の矢板線
竜江院のエラスムス像     民謡「八木節」の堀込源太
運命の九曜星         山医師・見川鯛山
現代に蘇る九尾狐       民話に残る五十里湖決壊
下野の民俗・芸能       哲学青年、藤村操の死
日光の花暦          馬頭たばこ小史
那須国造碑          栃木の文学碑
下野の地酒
【解題】
 口絵四頁アート紙カラー写真七枚。表紙写真は「千人武者行列」(撮影・富田文雄)
 これまた異色の一冊である。小川和佑先生の著書の中でおそらく一番の異色作であろう。先生のフィールドの広さといったら……。
 このシリーズは、全国都道府県別に各駅停車に乗って旅しようというものだが、単なる旅行案内書というのではなく、「全国歴史散歩」と銘打っているように、地域ごとの人と風土の特質に焦点が合わされている。どちらかというと書斎派のように思われがちの先生であるが、実はアクティブな行動派でもあり、フィールドワークも巧みなのであった。本書ではそれが遺憾なく発揮され、読み物としても面白く読める。
 
 県内で圧倒的に多いのは「おくのほそ道」の芭蕉の句碑である。そのこと、栃木県の文学の多くが旅行者によって書かれていることを集約的に具現している。
          ――「栃木の文学碑」
☆西山蔵書
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『きみはうまく文章が書けるか』
2016/09/06(Tue)
【書名】きみはうまく文章が書けるか
【副題】この一冊で苦手の作文もらくらくと!
【シリーズ名】吉野ろまん新書・23
【発行日】昭和五六(一九八一)年六月二二日
【発行所】吉野教育図書(大阪市阿倍野区)
【体裁】新書判、ソフトカバー装。
【頁数】二一八頁
【定価】四五〇円
【企画・解説】松永伍一
【目次・内容】
 はじめに――文章を書く
第一章 なにを、どう書くか
  なにを、どう書くかということ   君は作文が書けるか
  ちょっと難かしい話  中学一年生はこんな作文が書ければよい
第二章 どう書くか、書くための条件
  原稿用紙物語     どういう原稿用紙が使いやすいか
  原稿用紙の使い方   使いよい筆記具――鉛筆・万年筆物語
第三章 読者を想定せよ、集中力をつけよ
  読者を想定せよ      集中力をつけよ
  短い文章からはじめる   段落・構成を考える
  原稿を書く        私の美味求心談
第四章 主題・構成・表現
  主題と構成――タイ焼き作文論   表現さまざま
  続・表現さまざま     高校入試のための三〇〇字作文
第五章 本から表現へ、表現から本へ
  言語と表現を考える    読書感想文を書く
第六章 表現への出発
  表現への出発       言葉の広場に生きる
  よい文章と悪い文章    文章の魅力
 あとがき
 解説・書くことのよろこび  松永伍一
【解題】(※未読)
 目次から察するに、主に中学生向けに書き下ろされた文章指南の啓蒙書。しかし、「原稿用紙物語」や「私の美味求心談」などの項目を見ると、よくあるいわゆるハウツー本とは趣を異にしたものであろう。「言葉と表現を考える」など(おそらく表現は易しく書かれてあっても)レベルは相当高いものであろうと推察される。 
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『文明開化の詩』
2016/05/15(Sun)
【書名】文明開化の詩
【発行日】昭和五五(一九八〇)年一〇月二五日
【発行所】叢文社
【体裁】四六判上製、角背厚表紙、カバー装。
【頁数】二五七頁
【定価】一五〇〇円
【目次・内容】
1 詩的なるものとの遭遇
2 西方からの声
3 開花思想とナショナリズム
4 啓蒙としての民権歌謡
5 実験詩『新體詩抄』
6 詩のなかの精神史(1)
7 詩のなかの精神史(2)
8 新しき詩歌の時代へ
9 エピローグ―近代詩の光と影
 明治詩史年表
 参考文献
 あとがき
【解題】
(※調査中)
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『伊東静雄 孤高の抒情詩人』
2016/04/26(Tue)
【書名】伊東静雄 孤高の抒情詩人
【シリーズ名】講談社現代新書・五八五
【発行日】昭和五五(一九八〇)年七月二〇日
【発行所】講談社
【体裁】新書判
【頁数】二三七頁
【定価】三九〇円
【目次・内容】
序―新しき古典として―静雄頌
第1章―詩人の生い立ち
第2章―青春、あるいは詩人の出発
第3章―創造者への自覚
第4章―わがひとに与ふる哀歌
第5章―日本浪曼派と伊東静雄
第6章―八月の石にすがりて
第7章―わが家はいよいよ小さし
第8章―雲雀の歌
あとがき
伊東静雄年譜
参考文献 Ⅰ単行本 Ⅱ雑誌特集号
【解題】
 講談社現代新書の文学評伝シリーズの一冊として書き下ろされた詩人の評伝。伊東静雄を語ると先生は一層熱くなるようである。先生の文体は元々きびきびした端正で明晰な、時には清冽なといってもいいものなのだが、本書ではそれが際立っている。文章的にはもしかしたらベストワンに挙げてもいいかもしれない。
 一九八〇年当時、なぜ今、伊東静雄なのか。
 
 ……伊東静雄の詩を振りかえってみると、その詩はまことに激しく、重い。
 ……  ……
 その激しさ、重さが、教養化、技術化してしまった各種のメディアで日常生活の送りこまれてくる無数の詩にない、詩の原質を感じさせる。そこに伊東静雄の魅力がある。
 一人の詩人の詩業を語るためには、その詩人の全生涯は不即不離の関係であり、詩人の生涯とはまたその作品のすべてにほかならない。伊東静雄の生涯は真摯でひたむきな四十七年であった。彼ほど人生を凝視し、純化しようとした詩人は稀である。
 日本近代文学の課題としての、いかに生きるかという切実な主題を考える場合、そこに北村透谷から伊東静雄へという近代日本の知識人たちの軌跡といったものが思い浮かぶ。
 静雄の詩の凝視と純化は、人生そのものへの熱い視線であった。――それはそのまま詩の原質といえよう。伊東静雄の詩は、現代が既に過去のものとして捨て去ってしまった熱い魂をひたむきに蘇らせるものがる。
 ……  ……
 われわれは、伊東静雄の詩に示された詩の原質を、ふたたびわれわれの魂のうちに回復させるために、この苛烈な夢の詩人の生涯をその詩との対話を通して再検討するべき必然がある。
――「序―新しき古典として―静雄頌」

 それから丸二〇年経ってこの稿を書いた西暦二〇〇〇年現在も、さらに一六年を経た平成二八年現在も、このことは益々考えられていいことである。伊東静雄没後六三年、著者小川和佑没後一年半。新潮文庫の『伊東静雄詩集』と併せて今再び読み返すべき本である。
 
 ……この一冊は、「私の伊東静雄」的な色彩の濃い評伝となったようである。本書の後には、たとえばいまも継続している「伊東静雄書誌」の仕事や、「研究文献目録総覧解題」を踏まえての「伊東静雄研究史」のようなもの、あるいは個々の作品を一篇ごとに追求する作品論などの新しい課題に取り組まねばならないかも知れぬ。時間と健康が許すならば、それらに着手せねばという心が強くなったいる。
――「あとがき」
 
 これはわずか二年半後に『伊東静雄論考』で結実することになる。
☆西山蔵書 ◎五十嵐蔵書
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『文壇資料 軽井澤』
2015/11/16(Mon)
【書名】文壇資料 軽井澤
【シリーズ名】文壇資料
【発行日】昭和五五(一九八〇)年二月二八日
【発行所】講談社
【体裁】四六判上製、角背浅黄色厚表紙、カバー装、帯付。口絵4頁(写真8枚)
【頁数】二九〇頁
【定価】一四〇〇円
小川和佑著『文壇資料 軽井澤』カバー
【目次・内容】
 Ⅰ プロローグ 軽井沢春秋
中山道・軽井沢宿/軽井沢物語/ひなぐもる碓日坂/ある夏・聖パウロ教会の弥撒で……/軽井沢の沿革史/聖歌の朝に……/明治の軽井沢/樅の木陰――ショー氏記念碑
 Ⅱ 我は張りつめたる氷を愛す
犀星詩碑/沙羅の花/郭公の声――有島武雄の恋/三笠の森/麦藁帽子の夏/文学サロン・つるや旅館
 Ⅲ 物語の女――芥川龍之介
作家のおもかげ/めぐりあい/むらぎものわがこころ……/越し人/芥川龍之介の死
 Ⅳ 『風立ちぬ』の世界へ――あるいは青春について
「ルーベンスの偽画」の少女/続「ルーベンスの偽画」の少女/絵はがきのなかの風景/犀星山荘/『美しい村』幻想/続『美しい村』幻想/アカシアの並木/風立ちぬ、いざ生めやも
 Ⅴ さらば夏の光――三田派の人びと
戯曲「薔薇の館」と遠藤周作/丸岡明と軽井沢/『生きものの記録』/外人墓地・オーストラリア大使館など/堀辰雄と「四季」/犀星と信夫/さらば束の間の夏の光よ
 Ⅵ 中軽井沢と法政大学村――もう一つの軽井沢
西武開発と沓掛/中軽井沢の文学碑/星野温泉と詩人たち/白秋詩碑/法政大学村/岸田衿子と吉行理恵
 Ⅶ 川端康成の軽井沢
『雪国』から『雪国』へ/桜沢・川端別荘/白い降誕祭/逆照射なかの日本/『みずうみ』――戦後の軽井沢風景
 Ⅷ 信濃追分――立原道造の詩と青春
樹下/村ぐらし/鮎の歌/追分慕情
 Ⅸ 花の冠を…… ――カトリック詩人野村英夫の生涯
『雉子日記』の少年/立原道造との出逢いと別れ/堀辰雄詩集/孔雀の羽で……/花の冠を……/遥かな回想
 Ⅹ さまざまの夏
木の十字架/軽井沢の三島由紀夫/新しい出発――堀辰雄と雑誌「高原」/さまざまの夏――エピローグ
 軽井沢年表
 参考文献
【解題】
  講談社の「文壇資料」シリーズの一冊として書き下ろされた渾身の長編評論。日本の近代文学に一ジャンルを築いたといってもいい軽井沢。なぜそうなったか。軽井沢を愛した作家・詩人たちの肖像を通して、その風土と文学的土壌を解き明かす。軽井沢の文学を描いた数多くの本の中でも第一級の資料というだけでなく、ある意味「青春」の書で、軽井沢文学散歩のバイブル的存在になっている。
 なお、この「文壇資料」シリーズにはほかに、近藤富枝『本郷菊富士ホテル』『田端文士村』『馬込文学地図』、村上譲『阿佐ヶ谷界隈』『四谷花園アパート』、加藤一郎『戦後・有楽町界隈』、竹内良夫『春の日の会』、高橋勇『浅草物語』、磯村英樹『城下町金沢』、清藤碌郎『津軽文士群』、中村八朗『十五日会と「文学者」』がある。
☆西山蔵書 ◎五十嵐蔵書
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『堀辰雄―作家の境涯―』
2014/08/21(Thu)
【書名】堀辰雄―作家の境涯―
【シリーズ名】人文叢書
【発行日】昭和六一(一九八六)年四月一〇日
【発行所】丘書房
【体裁】A5版上製、丸背鶯色厚表紙、透明ビニール付、機械函入り。
【頁数】二七八頁
【定価】二九五〇円
【ISBN】4-87141-025-0
【目次・内容】
 序章 堀辰雄詩集
 第一章 生の意識――生涯のフィルム
  堀浜之助  作家の幼年
  下町育ち――『幼年時代』と堀辰雄
  『麦藁帽子』の原風景  一高入学
  母・志気の死  補説「花を持てる女」
 第二章 『聖家族』まで――芥川龍之介の死
  大正文学の終焉  ブリュー・バードという娘
  芥川龍之介の死  宿痾の発病――昭和三年の肖像
  『聖家族』まで  『聖家族』――真実への挑戦
  「文學」創刊
 第三章 心理主義の快楽
  東京人の感性  「聖家族」の周辺
  心理主義の快楽  静かなる意志――回復期
  補説『聖家族』  「美しい村」へ
  神戸・竹中郁――私的プルースト体験
 第四章 生の輝き
  『四季』の創刊  一九三三年・夏  立原道造
  生の輝き  物語の女――信濃追分
 第五章 鎮魂
  桜沢の越冬  風立ちぬ
  富士見高原療養所  鎮魂  補説一枚の絵
 第六章 菜穂子
  アヴェ・マリア
  自立したい女と自立できない男の物語
  現代史と『菜穂子』の位置  不毛の愛を描いて
  弱い男、黒川圭介
 第七章 乱世の文学者
  『大和路・信濃路』  『花あしび』の一冊
  作家と時代  「小さき絵」としての「大和路」
  折口信夫――「大和路」まで  『花あしび』の方法
 第八章 「大和路」のなかの堀辰雄
  大和古寺との出会い
  「大和路ノート」と「大和路」諸編
  新薬師寺から西の京へ
  佐保路から海竜王子・歌姫まで
  海竜王子の堀辰雄  飛鳥発見
  「大和路ノート」再検討  堀辰雄と日本回帰
  人麻呂挽歌  「古墳」をめぐる死生観
  堀辰雄の飛鳥観
 終章 さらにふたたび
  未完の小説――「水のうえ」をめぐる
  さらにふたたび……―戦後の堀辰雄
 主要参考文献目録・解題
 年譜
 わが内なる「四季」体験――あとがきにかえて
  初出一覧
【解題】
 昭和四四年一二月上梓の『「四季」とその詩人』にはじまり、立原道造、三好達治、伊東静雄の各研究・論考に続く、「四季」五部作の最後の巻に当たる『評伝 堀辰雄』(昭和五三年六月)からさらに七年(刊行時では八年)、大幅な訂正・改定が施され加筆・増補されたのが本書である。
 第一章中の「『麦藁帽子』の原風景」では、『評伝 堀辰雄』の解題で述べた通り、短篇小説「麦藁帽子」の「お前」のモデル(もしくは原形)が、国文学者・歌人の内海弘蔵(月杖)の〈長女〉の千江ではなく、〈次女〉の妙子に訂正されている。
 従来の第六章は、新しい第六章の冒頭と終章に分けられ、そのあいだに「菜穂子」論と第七章、第八章が増補されている。増補されている部分の初出は以下の通り。
 第六章 菜穂子(昭六〇・二『生きがいの再発見 名著22選』経林書房)
 第七章 乱世の文学者(原題「堀辰雄『花あしび』試論」―昭五九・七『昭和文学研究』第九集)
 第八章 「大和路」のなかの堀辰雄(昭五九・七月号&九月号『解釈(おそらく『国文学 解釈と鑑賞』)』、「堀辰雄―折口信夫と堀辰雄」昭六〇・一〇月宇都宮大学『外国文学』第三四号)
 わが内なる「四季」体験(昭五三・九月号『50冊の本』)
 
 以上を含め、本書収録に当たっては全編にわたって大幅な訂正・補筆が加えられ、再構成され、新たに資料、写真が増補されている。
 
 これを最後にして、当分私は十代のなかば、柔らかい心を一撃したこの作家と訣別しようと思う。
 ……  ……
 今年の夏も軽井沢は新宿や渋谷、原宿並の雑踏とにぎわいを見せるだろう。
 風俗の形で堀、立原、カルイサワのブームが軽井沢開発一〇〇周年に当って観光資源とファッション産業を中心に形成されるだろう。そういう雰囲気のなかで堀、立原が読者、ことに若い女性の読者に流通するのは、どうでもよいことだが、やはりどこかに抵抗感がある。これは「四季」体験の後遺症だというべきだが、ともあれ、この一冊を終れば、私の十代からの長かった「四季」遍歴もいちおう終りを告げる。
 それはめまいを覚えるほどの深い疲労感をともなう昨年の夏であった。
 ……  ……
 旧著から七年間、私にとっては必要以上に長い時間の持続と思われた。
   昭和六十一年 早春
     ――「わが内なる『四季』体験――あとがきにかえて」
☆西山蔵書
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