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わが内なる「四季」体験
2014/08/23(Sat)
 もう一度、原点に回帰するような形で、『堀辰雄―作家の境涯』を一冊にまとめた。さて、この新しい自著をわが机上に置いてみると、いまとなってはいかにも気恥かしいのだ。
 三十歳を越えてから、実は堀、立原を口にする際、一種の心理的抵抗を覚えはじめて、それが年とともに深まっていった。そういう心理の詰屈が私に詩を捨てさせた。詩に未練がなかったわけではない。しかし、敢えて詩を捨てることで、いわば自己の内部に形成された「四季」的体験を清算したかった。
 その頃、私は篤実な生活者になりたかった。政治や文学と切り離された地点で平穏に日常を繰り返し、生活的現実を確実に歩んでいる生活者をひどく羨望していた。――そして、そうした生活者の平衡感覚が欠落している自己の性情を矯正しようとした。
 ちょうどその頃、私の職場では岩石ブームと熱帯魚ブームが起っていた。しかし、またして私はこの市民社会の流行について行けない自分を発見した。ボーリングも、ゴルフも同じであった。不器用さもあるが、一度少年期に覚えた文学の魅力に比較すると、生活者を熱中させる流行の趣味も私にとっては、時代の風俗以上のものではなかった。

     ――小川和佑『堀辰雄―作家の境涯―』(昭和六一年四月・丘書房)「わが内なる『四季』体験――あとがきにかえて」より
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『堀辰雄―作家の境涯―』
2014/08/21(Thu)
【書名】堀辰雄―作家の境涯―
【シリーズ名】人文叢書
【発行日】昭和六一(一九八六)年四月一〇日
【発行所】丘書房
【体裁】A5版上製、丸背鶯色厚表紙、透明ビニール付、機械函入り。
【頁数】二七八頁
【定価】二九五〇円
【ISBN】4-87141-025-0
【目次・内容】
 序章 堀辰雄詩集
 第一章 生の意識――生涯のフィルム
  堀浜之助  作家の幼年
  下町育ち――『幼年時代』と堀辰雄
  『麦藁帽子』の原風景  一高入学
  母・志気の死  補説「花を持てる女」
 第二章 『聖家族』まで――芥川龍之介の死
  大正文学の終焉  ブリュー・バードという娘
  芥川龍之介の死  宿痾の発病――昭和三年の肖像
  『聖家族』まで  『聖家族』――真実への挑戦
  「文學」創刊
 第三章 心理主義の快楽
  東京人の感性  「聖家族」の周辺
  心理主義の快楽  静かなる意志――回復期
  補説『聖家族』  「美しい村」へ
  神戸・竹中郁――私的プルースト体験
 第四章 生の輝き
  『四季』の創刊  一九三三年・夏  立原道造
  生の輝き  物語の女――信濃追分
 第五章 鎮魂
  桜沢の越冬  風立ちぬ
  富士見高原療養所  鎮魂  補説一枚の絵
 第六章 菜穂子
  アヴェ・マリア
  自立したい女と自立できない男の物語
  現代史と『菜穂子』の位置  不毛の愛を描いて
  弱い男、黒川圭介
 第七章 乱世の文学者
  『大和路・信濃路』  『花あしび』の一冊
  作家と時代  「小さき絵」としての「大和路」
  折口信夫――「大和路」まで  『花あしび』の方法
 第八章 「大和路」のなかの堀辰雄
  大和古寺との出会い
  「大和路ノート」と「大和路」諸編
  新薬師寺から西の京へ
  佐保路から海竜王子・歌姫まで
  海竜王子の堀辰雄  飛鳥発見
  「大和路ノート」再検討  堀辰雄と日本回帰
  人麻呂挽歌  「古墳」をめぐる死生観
  堀辰雄の飛鳥観
 終章 さらにふたたび
  未完の小説――「水のうえ」をめぐる
  さらにふたたび……―戦後の堀辰雄
 主要参考文献目録・解題
 年譜
 わが内なる「四季」体験――あとがきにかえて
  初出一覧
【解題】
 昭和四四年一二月上梓の『「四季」とその詩人』にはじまり、立原道造、三好達治、伊東静雄の各研究・論考に続く、「四季」五部作の最後の巻に当たる『評伝 堀辰雄』(昭和五三年六月)からさらに七年(刊行時では八年)、大幅な訂正・改定が施され加筆・増補されたのが本書である。
 第一章中の「『麦藁帽子』の原風景」では、『評伝 堀辰雄』の解題で述べた通り、短篇小説「麦藁帽子」の「お前」のモデル(もしくは原形)が、国文学者・歌人の内海弘蔵(月杖)の〈長女〉の千江ではなく、〈次女〉の妙子に訂正されている。
 従来の第六章は、新しい第六章の冒頭と終章に分けられ、そのあいだに「菜穂子」論と第七章、第八章が増補されている。増補されている部分の初出は以下の通り。
 第六章 菜穂子(昭六〇・二『生きがいの再発見 名著22選』経林書房)
 第七章 乱世の文学者(原題「堀辰雄『花あしび』試論」―昭五九・七『昭和文学研究』第九集)
 第八章 「大和路」のなかの堀辰雄(昭五九・七月号&九月号『解釈(おそらく『国文学 解釈と鑑賞』)』、「堀辰雄―折口信夫と堀辰雄」昭六〇・一〇月宇都宮大学『外国文学』第三四号)
 わが内なる「四季」体験(昭五三・九月号『50冊の本』)
 
 以上を含め、本書収録に当たっては全編にわたって大幅な訂正・補筆が加えられ、再構成され、新たに資料、写真が増補されている。
 
 これを最後にして、当分私は十代のなかば、柔らかい心を一撃したこの作家と訣別しようと思う。
 ……  ……
 今年の夏も軽井沢は新宿や渋谷、原宿並の雑踏とにぎわいを見せるだろう。
 風俗の形で堀、立原、カルイサワのブームが軽井沢開発一〇〇周年に当って観光資源とファッション産業を中心に形成されるだろう。そういう雰囲気のなかで堀、立原が読者、ことに若い女性の読者に流通するのは、どうでもよいことだが、やはりどこかに抵抗感がある。これは「四季」体験の後遺症だというべきだが、ともあれ、この一冊を終れば、私の十代からの長かった「四季」遍歴もいちおう終りを告げる。
 それはめまいを覚えるほどの深い疲労感をともなう昨年の夏であった。
 ……  ……
 旧著から七年間、私にとっては必要以上に長い時間の持続と思われた。
   昭和六十一年 早春
     ――「わが内なる『四季』体験――あとがきにかえて」
☆西山蔵書
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『評伝 堀辰雄』
2014/08/19(Tue)
【書名】評伝 堀辰雄
【シリーズ名】ロッコウブックス
【発行日】昭和五三(一九七八)年六月一五日
【発行所】六興出版
【体裁】四六版ソフトカバー、カバー装、帯付。ブックデザイン・蟹江征治。
【頁数】二一三頁
【定価】九八〇円
【目次・内容】
 序章 堀辰雄詩集
 第一章 生の意識―生涯のフィルム
  堀浜之助  作家の幼年
  下町育ち―『幼年時代』と堀辰雄
  内海千江―『麦藁帽子』の原風景  一高入学
  母・志気の死  補説「花を持てる女」
 第二章 『聖家族』まで―芥川龍之介の死
  大正文学の終焉  「ルウベンスの偽画」
  ブリュー・バードという娘  芥川龍之介の死
  宿痾の発病―昭和三年の肖像  「聖家族」まで
  「文學」創刊
 第三章 心理主義の快楽
  東京人の感性  「聖家族」の周辺
  心理主義の快楽  静かなる意志―回復期
  補説『聖家族』  「美しい村」へ
  神戸・竹中郁―私的プルースト体験
 第四章 生の輝き
  「四季」創刊  一九三三年・夏  立原道造
  生の輝き  物語の女―信濃追分
 第五章 鎮魂
  桜沢の越冬  風立ちぬ
  富士見高原療養所  鎮魂  補説 一枚の絵
 第六章 さらに再び
  アヴェ・マリア  『大和路・信濃路』
  未完の小説―「水のうえ」をめぐる
  さらにふたたび……―戦後の堀辰雄
 主要参考文献目録
 あとがき
【解題】
 口絵写真二頁(堀辰雄肖像昭和九年秋追分の氷室前にて・軽井沢の旧堀家別荘・「四季」追悼号四冊・短編集『風立ちぬ』昭和一二年六月初版・片山慶子〈廣子の誤植〉宛書簡昭和一四年九月一日)
 本書は、『「四季」とその詩人」』にはじまり、立原道造、三好達治、伊東静雄の各研究・論考に続く、「四季」五部作の最後の巻に当たる一冊。
「従来の拙稿のように作品論を離れて、専ら伝記的事実に拠りながら作家像を描いて行くことを意図した」もので、「事実を通じて、その生涯をたどりながら、そこに自ずと形成されて来る作家そのものを大正・昭和という流動の激しい時代を念頭に入れて、人と時代のなかで堀辰雄をとらえてみたかった」(「あとがき」))とある。
 ところが、実は本稿には、当時の資料不足によりその事実の部分で重大な誤謬があった。短篇小説「麦藁帽子」の「お前」のモデル(もしくは原形)は、国文学者・歌人で明治大学硬式野球部初代部長で野球殿堂入りもしている内海弘蔵(月杖)の〈長女〉の千江とされているが、これは〈次女〉の妙子の誤りである。このことは、八年後の『堀辰雄―作家の境涯―』(昭和六一年四月・丘書房刊)で訂正されているが、中島昭氏が『堀辰雄覚書』(昭和五九年一月・近代文藝社刊)でその虚実を詳細に考証し、その著書の巻頭に掲げられた資料写真によって従来不明だった部分が明らかにされたのであった。(なお、中島昭氏の『堀辰雄覚書』の帯には小川和佑先生の推薦文が印刷されている)。
☆西山蔵書
 
※ということで、基本的には編年体で編集している当『著書目録』の順番としてはおかしなことになるが、次に本稿の増補・加筆・訂正版である『堀辰雄―作家の境涯―』を挙げることにする。
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